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2015/9/29(Tue)

 窓から注ぐ月の光だけを残して、すへての灯りを消した。この日だけ少し増量されているという満月の光には、部屋にあるものの輪郭を捉えるだけなら十分な明るさがあった。仮に世の中の光がいつもこれぐらいの量だったとしても、それはそれで世界は成り立ちそうなほどだ。
 いやむしろその方が人々は無駄な明るさがもたらす意味のない羞恥を取り払って、今よりもずっと大胆になれるかもしれない。それは時代の閉塞感をも打ち破り、新たな創造を健やかに育むかもしれない。
 ふと、太陽はいささか明るすぎるのではないかとさえ思う。


小谷隆


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