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<< 染め替えという慈悲 >>


2015/6/5(Fri)

 あまりよく知られていないけれど、日本には染め替えという伝統がある。汚れたり色褪せたりした衣類を黒く染め替えることでリユースしようという習慣だ。京都には何軒もそういう専門店がある。
 まことに黒とは偉大な色だ。あらゆる光を吸収するその闇は白も赤も青も呑み込んでしまう。あらゆる罪を赦す仏の大慈悲のようでもある。漆黒染めが仏閣のひしめく京都で発展したというのも、黒という色のそんな神秘性と無関係ではないだろう。
 不慮の粗相で着られなくなった大切な一枚があるなら、ぜひ染め替えという慈悲を。


小谷隆


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