ホーム > 小谷の250字 > 2015年8月(31)


<< 命の方がもったいない >>


2015/8/1(Sat)

「クーラー」が三種の神器と言われたのはもう40年も昔の話。当時は贅沢品の一つだった。
 その時代の名残か、今もある年齢層以上はエアコンを使うことに抵抗がある。昔はこんなものなくても我慢できた、と言うのだけれど、都会は今やヒートアイランドだし、当の強がっている年寄りは体温調節のきかない年齢である。
 この猛暑の中、連日のように熱中症の死者がカウントされる。そのほとんどが高齢者。エアコンのある部屋で死んでいたケースも多々あるのだとか。
 電気代よりも命の方がもったいないのと思うのだけれど。
小谷隆


<< 涼しい音 >>


2015/8/2(Sun)

 川のせせらぎの音を流しておくと心理効果で体感温度が下がるという。人は涼しさを連想させるものには敏感に反応するようである。
 風鈴は風が吹いていることを音で伝えることで風の存在感を強める。鈴虫の鳴き声はその盛りの頃の涼しさを想起させる。
 さて自分にとってはどんな音が涼しさを運んでくるだろう。たとえば高原の森のヒグラシの声。午後3時頃から鳴き競う、哀愁を帯びたカナカナというあの声だ。
 そういえば10年ほど前に録音した素材があった。CDにでも焼いて、寝苦しい夜にはあれをリピートしてみようか。
小谷隆


<< お金持ちという生業 >>


2015/8/3(Mon)

 幼い頃、「お金持ち」という職業が存在すると信じていた。彼らはお城のような豪邸に住み、シャンデリアの下で毎日ビフテキを食べている。その子女たちの部屋は望む限りのおもちゃと、食べきれないほどのお菓子で埋め尽くされている。家のことはすべて「召使い」がやってくれる。
 彼らは経営者でも芸術家でも芸能人でもない。金持ちであるということが、会社員や消防士やパイロットと同列の立派な職業である。ただ金持ちであるというだけで、無尽蔵な金を使うことができた。
 それは昔も今も、僕が最も憧れる職業である。
小谷隆


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